04 - 一回目/始まりという名の巻き戻し

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 居心地の悪い怒りを吐き出す僕に、姉の言葉は、理解できなくて聞いてしまう。 「怖い、慣れる? 姉さん、いったい……」 「あぁ、やっぱり姉さん、嫌われてるのね。辛いけれど……でも、二度目だから、少し、慣れられたかも」 「……どういう、ことだい」 「嘘じゃないあなたが、二度、見れたってことだから。嬉しいわ」  姉の言葉で、引っかかった言葉を、口にする。 「にど……め?」  唇が震えながら、聞き返す。  ――二度目なら、繰り返したのなら、同じ記憶があっても不思議じゃない? 「そんなこと、バカにしてるのか!?」 「あぁ、そうそう。あの子だったら、そういうわ。うん、そう言う子だった」 「姉さん……!」  頭がおかしくなりそうだった。  もしくは、頭がおかしいのは、眼の前の姉の方なのか。  不安に声を荒らげる僕に、姉は薄い三日月に似た穏やかな笑みを浮かべながら、話しかけてくる。 「言ったでしょう? 夢は繰り返せるから、良いわねって」 「夢……」「あなたは、夢。わたしの、夢。あの日の記憶と、ありったけのデータから造られた、あの子の亡骸。そこから生まれた、夢の君」 「なにを言っているのか、わからないって……! 」  激高して、もう、眼の前の狂った女の口を止めようとして。 「あなたは、わたしと別れたあの日を、少しズレて繰り返す……最後の弟。そう、それがあなた」  ――その言葉が、決定打となった。 「死んだ弟の、夢。仮想空間の、ありえたかもしれない、あの子の一日。そのための……あなた、なの」  姉の言葉に、僕は、呆然として呟く。 「……なんだよ、それ」 「あれから、時間が経ってるの。だから、夢の中なら、ずっとあなたと過ごした日にいられるようになったの」 「じゃあ、『僕』は……誰なんだ?」 「わたしにとっては……あなたはあの日の、弟のままよ?」  すっと撫でてくる、女の手。 「でも、そうね。怖いわよね。だけれど、大丈夫。わかるように、同じように、ならないようにプログラムしているから」  誰だ、この女は。  は虫類にさわられたような気味の悪さ。
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