02 - 一回目/再会したという記憶

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「……っ」  このまま部屋に戻るべきだ、と頭が警告する。  でも、たぶん、それは無意味だ。  記憶が教えている。  今まで、生まれてから、ずっと知っている。  たとえ逃げても、この場所と違う場所で起きたとしても、この怯えは消えないんじゃないかと感じられる。  ――そんな感覚だけは、しっくりとこの身体になじんでいる。 (身体だけ、起きちゃったのかな)  ぼんやりとした頭で、しかし、仕方なく足を踏み出す。  とん、とん、と階段を降りていくと、匂いと音が近くなる。  リビングルームには、大きなテーブルが一つと、テレビとソファー。少し離れた場所には、キッチンが備え付けられている。  家族四人が住むのにちょうど良かった部屋は、両親の海外転勤で、大きすぎる場所になっている。  その頃は、まだ、見えない部分もあったのに。 「おはよう。いい夢は見れた?」  キッチンからかかってきた声に、背筋を震わせながら、眼を向ける。 それは、かつて……いや、今も僕を追いつめる、完璧な姉の姿。 「姉さん……」 「あら、おはようはどうしたの?」  優しく、けれど質問するような言い方。  朝の挨拶は、毎日のように注意されるから、必ずしている――そう、記憶が教えてくれる。 「おはよう、姉さん」
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