03 - 一回目/浮遊感の正体は

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「……」  ――姉は、口を閉ざしている。こんな時の姉は、なにか、している。僕の記憶が、そう訴える。  姉は、学校でも美人で、勉強もできて、人付き合いも達者な人だ。僕とは違い、みなに憧れられたり、嫉妬されたりしていた。  そんな姉は、なぜか……僕のことが、よく気になっていたみたいだ。  近所でのつきあいも、学校での人間関係も、気になる女性との距離感も、勉強の進め方も。  知らないうちに、レールの上を歩いている。 「牽かれる……?」  息を吐くようにささやかれた、姉の一言。 「そうだよ。僕はもう、耐えられなかった。だから、出て行ったんだ」  姉の干渉は、両親が居なくなってから、ますますひどくなった。  食事の時間や外出の時間、考え方や話し方、お金の管理や自分の部屋の整理にまで、手を出してくるようになった。  イヤだと言っても、姉は笑っていた。聞く耳も持ちながら、その言葉は、違う意味にとらえているようだった。 僕はイヤになり、友達の家などに外泊するようになったが……その友達の様子がおかしくなることも増えてしまったため、その手も使えなくなっていた。  そんな、干渉される日々にストレスがたまっていた、そんなある日のことだったのだ。 「逃げ出すなんて、悪い子ね」  愛と憎悪の、混じる瞳。  口元は笑っているのに、眼は、ぜんぜん違う。 「姉さんが、僕のプライヴェートに、干渉しすぎるから」
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