03 - 一回目/浮遊感の正体は

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 ……そうだ、想い出した。  この日は、恋人と出かける約束があったのだ。  大切な人。明るく前向きで、目標に向かって、でも僕と話すのを楽しんでくれる彼女。 「あの子は、あなたにふさわしくないわ。だから、別れてもらったの」  ――その楽しい時間が終わり、別れた後で。  姉は、彼女と会い、僕との別れを切り出したらしい。 「そんなの、姉さんが決めることじゃないだろう!」  彼女は落ちこみながら、姉に否定されたことを悲しんでいた。  どうしてなんだろう、って、何度も僕に問い返してきた。 「そうだ、彼女は夜に泣いて……」  ――言ってから、自分の言葉の奇妙さに気づく。 (今、起きたのに、夜?)  じゃあ、泣いていたのは、昨日のことなのだろうか。  でも、記憶にある今日の日付と、昨日の出来事が、ズレている。 「……いけないわ。その会話、まだ朝の時点ではしていなかったじゃない」  そんな僕に追い討ちするかのように、姉は、奇妙なことを言い出した。 「朝の、時点?」 奇妙な言葉に、僕も気づく。  ――そうだ。それは、今日の夜……まだ、これか らのことじゃないか?
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