dozen rose

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あぁ、それなら。 あいつがどんな女の子かなんていくらでも言えるよ。 可愛い人だよ。 見た目、というか、纏ってる雰囲気が、というのかな。 よく笑うね。 けど、大きな口を開けて笑うのよりも、オレを見て”ん?“って微笑む表情の方があいつらしくて好き。 キャーキャーと騒がしい子じゃないね。 どっちかっていうと物静かで落ち着いてるんじゃないかな。 真面目、だよ。 仕事もきちんとやってる。 負けず嫌いみたいね。 私は私はってタイプじゃない。 自分の意見を強くは主張しない。 必要がないからって言ってたな。 案外気ぃ遣いだよね。 協調性があって周りをよく見てる。 空気を読むのが上手いんだろうね。 料理が得意じゃないって言うんだけど、食えないもん出されたことはないよ。 というか、オレの味覚に合わせてんだろうね。 それって料理が上手って言えると思うんだけど、本人は否定すんだよね。 別々のことやってるはずなのに、オレのことよく見ててくれるんだよ。 だから甘えちゃうんだけど、でも放っとき過ぎかなってめちゃめちゃ反省するんだから、いいように転がされてんのかもね。 そうだとしてもさ、イニシアチブは男のオレにあると思わせてくれてるんだからさ、優秀じゃない? 居心地は最高だよ。 語弊あるように聞こえるかもだけどさ、あいつとの時間が居心地いいんだよ。 毎日毎分言ってるわけじゃないけど、 あぁ好きだなって、 本当にそう思ってるよ。 「まるで久保田さんのようですね」 店主にそう言われ、はたと気づいた。 あぁ、そうかもしれないね。 よく似てる。 似てたから惹かれたのか、 付き合い始めて1年という期間が似させたのか、 もはやどっちだっていいけど。 「こんな感じでどうでしょうか?」 きちんと纏める前にと見せてくれた花束は想像を越えて豪華なものだった。 「あ、はい、そんな感じで」 店主は”よっしゃ“とばかりに気を良くして花束をくるんと纏めて、手際よくラッピングへと取りかかった。 受け取った花束を抱えたオレは、 数日前に目撃した、 真っ赤な薔薇の花束を抱えて走る男と同じだろう。 むせかえるような香りが満ちる車内で、 紅潮したあの頬の理由が、 どっちなのかがわかった気がした。
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