晴れのち雨、時々恋

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「何?」 「……」 「呼んでおいてシカト?」 「教えてくれ…お前、本当に千紘か?」 「ぷっ(笑)変なこと聞くんだね」 「だって…オレが知ってる千紘は…」 オレの記憶の中にいる千紘が一瞬でよみがえってくる。 脳神経が今の千紘と結びつけようと必死に頑張ってるけどショート寸前だ。 「だって…お前は…あんなに…」 「それだって“私”だし、今の私も“私”だし…って、何か難しい話だね」 “あははっ” と、あまり気持ちのこもってない笑い声を上げて、 “…どっちも私なのにな” “どっちかじゃなきゃダメかな…?” 背中を丸めて膝を抱えた。 「そんなことはないと思うけどさ…」 「うん…」 「でも、どっちかというと、今のお前がいいな」 「くっ…(笑)」 「な、なんだよ!笑うなや!」 「だって…昨日の…」 「昨日っ?!」 「昨日の…口説き文句と……同じって!……ウケる」 えーっ?! なんですかそれはっ! 口説き文句が同じ…って、なんだかすっごく恥ずかしいんですけど! 「そ、それなんだけどさ……覚えてねぇんだよ……ホント、最低だよな、ごめん…」 「やっぱそっかーぁ!」 「ごめん」 「その“ごめん”は、何に対して?“覚えていないこと”に?それとも“好きでもないのに抱いたこと”に?それとも、えっちなことしたのが“親友の妹”だから?」 「……」 「うっそ!全部に?」 「あ、いや、…違っ……」 「違う?どれが?」 「…そのっ…」 強いて言うなら、 料理上手な子に胃袋を掴まれたってやつの、“大人版”みたいなもん。 掴まれたのはドコか言えないけど。 どうしてこうなったか覚えていないんだが、目が覚めたらなんだかいい感じで、惚れちゃった……訳で…。 「もーっ!と言いたいところだけどね、そんなのどーでもいいの。」 「へっ?」 「今のお前がいいって…オレと付き合うかって…そう言ってくれたのは本当だし!“何でカナにだけずっと執着してたんかな…こんな近くに、こんな落ち着く場所があったんじゃん…”って、ようやく私のことを“雅文の妹”じゃない目でみてくれたんだもん」 「えっ…」 「昨日言ってたよ?」
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