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細いカプリをくわえた口元が緩く開いた。
「思い出した?」
「うん……」
「そっか…」
千紘は、どこかサッパリしたような表情で煙草を揉み消すと、
「で、やっぱり、酔ったイキオイってやつで片付けちゃう?」
そう言い放った。
話を聞くまでは妙に冷静な態度の千紘に違和感があったし、なんなら“じゃ…その方向で…ひとつよろしく”と言い出しそうなオレもいた。
けど……。
今は、
全部を思い出した今は、違う。
「誕生日…祝ってくれんじゃねぇの?」
「えっ…」
「ハンバーグ……作ってよ、オレに」
「いい……の?」
「約束しただろーが」
散々“物わかりのいい女”を演じていても、あくまでそれは“いい女風”でしかなくて。
強がる素振りを見せていた千紘の顔に、ようやく笑みがこぼれて、ついでに目からもポロリと涙もこぼれ落ちた。
「今のお前も…いいな」
「え?」
「何でもない…さーてと、まずは、どうすっかねー、腹も減ったしなー」
「どっか食べに行くって言っても…私、こんな格好だし」
「だよなー。そーなるとやっぱ…」
「コンビニ?」
「いや………」
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