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苛立ちを隠せずにガタガタと足を揺らすコータ。
「イベントの大っ嫌いな俺のイブの告白も、元日の初詣の後のデートも……すっげぇ嬉しそうだったのは全部演技って?(笑)初めて俺に抱かれた時の涙の意味は嬉しくてじゃないわけだ?」
彼の言うことは間違ってる。
どれだけ私が嬉しかったか…。
でも、ずっと黙っていた私は、“違う”と言い返せないでいた。
私は、まさかコータが私を好きだなんて思っていなかったの。
この美容院にきて2年とちょっと。
ずっと好きだったんだって言われたのが、辞めることを店長に申し出た後なんて…。
だから、言い出せなかった。
言ったら“じゃ、別れる”って言われそうで恐かった。
すぐにいなくなる子より、そばにいる子の方がいいに決まってるって…。
“お前は潤さんが好きなんだろうって思ってたから…すっげぇ嬉しい”
そう言って抱き締めてくれたあの時の笑顔を曇らせたくなかった。
始まったばかりの恋なのに、もう目の前に終わりがあるなんて、
愛おしくってしょうがないって伝わる澄んだ目で見つめられてしまうと、
そんなこと……言えなかったの。
「もし…別れるって考えてんなら、振ってよ、俺を。
俺からはお前を嫌いにもなれねぇし振ることも無理。
お前が“サヨナラ”って言うんならそうする。
お前が言えねぇんなら……」
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