ウソツキカノジョ

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社に戻ると退勤の時刻は間もなくだった。 週末のせいか次々に退社していく仲間たちにまぎれて、 「二宮、行くよ」 彼女から声がかかり、オレもPCの電源をオフにした。 ついて行ったところは、普通の居酒屋だった。 互いに好きなものを注文して、部長の愚痴なんかを喋って、ほどよくアルコールが回った頃、 「何でも聞いてくれるんだったよね?」 忘れかけてたリクエストを彼女が言った。 「はい。お詫び、になるかどうかわかんないですけど」 「何でも?」 「いいっすよ」 「じゃあさ、」 「はい?」 「抱いてよ、私のこと」 それが彼女からのリクエストだった。 「な、何言って……」 「何でもいいんでしょ?」 「そう言いましたけど!」 「怖気づいてる?」 「いや、その……」 「私なんかじゃダメかー」 「いや、それはなくって……」 「こーゆーこと言う女と思ってなかった?」 「それは、えっと、はい、あの……」 「引いてるんだ」 「引くとかそういうんじゃ!」 「じゃあ何よ?」 「突然過ぎて、その……」 「男の子の日とか言い出さないでよね」 「……え?あ、はい」 こんな風に強気で押してきたくせに、 いざRESTとかSTAYとか書かれた看板のある建物を目の前にすると、 彼女からゴリ押しの勢いなんかは消えかかっていた。 オレは、どうしようかと俯く彼女の手を掴まえると、 このチャンスを逃すまいと、ズンズンと入口を抜けて行き、適当に目についたパネルをタッチしていた。 ******
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