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私には、 少し大人な彼は、憧れだった。 20歳の私には、 うるうるした黒目がちな瞳は、眩しすぎた。 私は、 印象的な笑い声を聞き、 クシャクシャな笑顔をこっそりと見ているだけで充分だった。 ネームプレートの二つの漢字が、 気がついたらタカラモノになっていて、 どこで何をしていても、目に飛び込んでくる【相】と【田】に指で触れるだけで、 マフラーとコートで隠れたちっちゃい胸が、 キュッ………て締め付けられていた。
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