156人が本棚に入れています
本棚に追加
格好いいお店でも、流行りのお店でもなくて、
いつも行く『アオゾラ』の名前を慌てて書いてしまった。
通ってるおれが未だ謎めいたあの人たたちはきっといるだろうし、からかわれるんだろうな。
まぁ…でも、いいや。
今日……こうして君に話しかけられたんだもん。
バイトが終わるのが2時。
待ち合わせに指定した3時までに、
コーヒーを飲みながら、作戦を立てよう。
バイトの引き継ぎを終え、
マフラーとコートを手に取り、急いで駅の南口へ走る。
走りながらコートを羽織り、マフラーをグルグル巻いて、一目散に『アオゾラ』に走る。
おれがバイトを始めた時に君はまだ高校生だったよね。
それから計算すると……、
えーっと……
もうすぐ2年…かな?
住んでるとこも、
誕生日も、
知らないことはいっぱいある。
あ、そうだ!
君の名前を聞かないと。
すごいよね…君の名前を知らないんだよ?
それなのにさ、気づいたら…。
ずっと好きでしたって言おう。
付き合ってくださいって言おう。
待っててくれたなら、
『アオゾラ』でおれを待っててくれたなら、
いっぱいいっぱい大好きって、
君に伝えよう。
ドアを開けると、一斉に集まる視線。
それを感じながらも顔を動かすと、
入り口に近いテーブルに、
いつも遠くから眺め、見慣れた後ろ姿が目に飛び込んできて、
一気に心臓が跳ね上がる。
「…………」
君がいてくれて嬉しいんだよ?
でもさ…。
格好よく君に言うための作戦をね、
本当はね、練りたかったな、なんてね。
最初のコメントを投稿しよう!