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「えーっと…お待たせ…?」
あはっ…って笑うと、目尻がクシャっとなる。
この笑顔が大好きだなって思うと、私もつられて笑顔になる。
「いえ……まだ3時じゃないですから…」
「そうだよね?おれ、3時って書いたよね?……どうして…いるの?え、ずっとここにいたの?」
「はい……」
コートとマフラーを脱ぎながら、
「マスター!コーヒー!……あ、ごめんね、えっとぉ…そこ…座っていい?」
彼が長い指で私の向かいの席を指差して腰掛けた。
「あのさ……その……えっとぉ」
「は…い……」
先に進まない会話。
何度も繰り返す“あの…”に、
「意気地無し!」
カウンター席から小さく野次が飛び、それをマスターが苦笑いで、
「茶化すなって」
まぁまぁ、と宥めるように制していた。
カウンター席の人がこっちに身体を向けて座っているのが視界の端に入って恥ずかしさが増してくる。
「私……」
「おれ……」
声を発したのは同じタイミング。
「先にどうぞ……」
「先にどうぞ…」
と言ったのも同じで。
「相田っ!お前、男だろ!だったら、さっさと言えよ!」
と、背中を押す最後の野次が飛んできた。
彼は、肩を上下させて何度も大きな深呼吸をして、
乾燥しているのか、唇をペロっと舐めた。
そして、ふーっと息を吐いて、
「あの……君が好きです。付き合ってください」
一気に早口で言い終わると、
両手で顔を隠して“はー…言っちゃったよぉ”と俯いた。
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