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ガタガタと浴室から音が聞こえた。
顔を上げると、バスタオルを巻き付けてこちらを伺う彼女と目が合った。
なんだよ、照れちゃって。
すっげー可愛いじゃんか。
年上だし、上司だし、こんな言い方失礼かもしれないけど。
挙動不審一歩手間の彼女は、テクテクと歩きベッドのふちに腰かけた。
「二宮は、シャワー……」
「あ、うん……」
空っぽにした缶をコトンとテーブルに置いて、ソファーから立ち上がり、
オレも軽く汗を流してくる………
つもりだったのに、
立ち込めた仄かな石鹸の香りがオレの抑えつけられてた理性を吹き飛ばし、
タオル1枚身にまとった彼女を左手でトンと押し倒していた。
簡単に倒れる彼女に跨ると、少しばかり抵抗する身体を片手で抑え、もう片方の手でネクタイの結び目を緩めた。
「二宮……?」
怯えたような表情のその奥はまだ読み取れない。
その考えていることが知りたくて、
ほんのちょっとだけ、荒っぽい手段に出た。
「シャワー、は?」
「もういい。待てなくなった」
「えっ」
「ひろみさんがいいニオイさせて誘うから……」
片手でプチプチとワイシャツのボタンを外して脱ぎ捨て、ベルトに手をかけてズボンから足を引っこ抜いた。
素肌の上半身で覆い被さると、滑らかで柔らかい彼女の肌と熱を持ったその頬に、
否応なしにオレの呼吸は乱れていく。
「ひろみさん?」
「な、にっ?」
耳のそばで息を多めに名前を呼ぶ。
ビクッと強ばる身体をキュッと抱きしめる。
「ひろみさん?(笑)」
「なに、よ」
名前を呼ぶ度に小さい悲鳴のような息を飲み、それから少しだけ抵抗しようと身体を強ばらせる。
「緊張してるんですか?」
「してないっ」
「くふふ(笑)」
「何で、笑うのっ」
「だって…(笑)」
目尻にうっすらと浮かぶ雫をからかうつもりだった。
「抱いてよ」と言ったその真相を聞き出そうと思っていた。
本当は彼女に寄せていた恋心を告げようかとも思っていた。
その全部をひとつずつクリアにする前に、
彼女は唇を震わせて細い腕をオレの首に巻き付けながらこう言った、
「二宮が好きとかじゃないからね」
と……………。
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