ウソツキカノジョ

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「イケメン届けられましたー」 「自分で言うの?(笑)」 「そう思ってるくせに」 変わらない口の悪さも、舌足らずの話し方も、 「約束、午後2時でしたっけ?」 皮肉めいた物言いも、 全部、あの頃のまま。 「早く来すぎたかな」 「バカ」 「くは(笑)」 「それに約束なんかしてないじゃない」 「そうでしたっけ?誰かさんがオレに言いたいことがあるんじゃないかと思ってたんすけどね?」 「言いたいことなんか何も無いよ?」 「ま、いっか(笑)話は後で!それより!クーラー効いてるとこ連れてってよ」 「はいはい」 重たそうなバックを持ってあげようかと、前かがみになった私を、 二宮は、あの日と同じように私を腕の中に閉じ込めた。 「まだオレに嘘つくつもりなの?」 「二宮……」 「素直になればいいのに」 「じゃあ言うけど」 「はい」 「二宮、あんた仕事は?どうしてここにいるのよ?夏休みにしては早いでしょ?」 「はいはい。それは、まぁ、おいおい?(笑)」 「何よ、自分だって色々と話をすり替えたりごまかしたりするじゃない!」 「おぉ?(笑)言いますね!(笑)」 「こんなとこまで来て!暑いの嫌いなくせに!」 「オレ、暑いの嫌いじゃないですよ?」 「嘘!」 「嘘つきはどなたですか?(笑)というか、ひろみさん?」 「何っ?」 「ここ、会社の入口で、窓からがっつりみんながおれらのラブシーン見てますけど、いいんすかね?(笑)」 「へっ?!あ、はっ離れて!!」 「あははは(笑)」 「ちょっ、二宮っ!!」 記憶の中で細いと思っていた二宮の腕は、やっぱり男の人で、 ジタバタともがいてもピクリとも動かなかった。 そして、暴れるほど抱きしめる力が強くなっていく。 「離れるわけないでしょ?」 「っ……」 「オレは好きですよ?ひろみさんはオレのこと……」 「……好きとかじゃないから」 「ふ……(笑)」 「二宮?」 「はい?」 「好き、なんて言葉じゃ表せないくらいだから」 「………ずりーなぁ、もう!」 ****** *完*
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