序章 《東雲の血》

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「ワシは信じられんかった。勿論玲子もじゃ。」 母さんが昔を思い出したのだろう。俯く。 「ワシは、ひどく自分に失望した。それを事もあろうか怜香にあたったのじゃ。 そして、怜香は家を出てしまった。 この話は、それとなく泰史も聞いたことがあるじゃろう?」 「うん。聞いたよ。」 「それから、暫く後じゃ。玲子がまた予知夢を見たのは。 それは、怜香が子を生むこと。そして、その子に、力があること。それを聞いた。 その力は下手をすればワシ達以上になることを玲子は危惧しておった。 元々霊媒の家に住んでいた訳でもない子供が修行もなしにその力を御しきれるか分からなかったからじゃ、いやワシの立場から言えば不可能に近い。 つい2年くらい前にあった。呪いの件はあれは完全に運が良かっただけじゃ。 玲子のケースもあったからな。 ワシは、いつかワシの前に来るであろう。孫のために家にある文献を読み返した。 そして、それが分かった。」 俺は、ゴクリと唾を飲み込む。 祖父ちゃんは一呼吸置いてから再度話始める。 「泰史の力は先祖・・・それも開祖の力に酷似している。」 「お父さん。その開祖ってどんな力だったの?」 「うむ。開祖、名は東雲 桜花 (しののめ おうか) 東雲の血が一番濃く尚且つ力が一番強かったらしい。 その力は呪いにもなり、ありとあらゆる呪いも跳ね返す。異常とも呼べる力じゃ。」 「祖父ちゃん呪いにもなるって・・・?」 「そのままの意味じゃ、念じるだけで人は死ぬ。」 「でも、そんな人の力がなんで俺に・・・」 「うむ、それは古い文献で見た。」
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