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「だから、というわけではないが、力の事を話しとかねばならんのだろうな。」
「とかいって旦那さまは坊っちゃんの事がご心配でずっと調べてなさったんですよ?」
マキさんがお茶を乗せたお盆を持って客室へと入る。
「マキ、余計なことは言うでない。」
「あら。口が滑っちゃいまして申し訳ございません。」
祖父ちゃんは咳払いをしてから
「ま、まぁワシが知ってることは教えよう。」
「ありがとう。祖父ちゃん。」
「で?いつまでいれるのだ?学校があるのだろう?」
「一応まだ、一週間くらいは大丈夫だよ。」
「わかった。とりあえず今日はもう休め。」
「うん。分かったよ。でもちょっと話したいんだ。祖父ちゃんは大丈夫?」
「ん?話したいって力の事か?」
呆れた母さんが付け加えてくれた。
「違うわよ。祖父と初めてあった孫が普通の会話もしたいのは当然のことでしょう?」
「あ、そういうことならうむ。話をしようではないか。」
「智里はどうする?」
「私はお母さんと部屋にいるわ。」
「分かったよ。」
お母さんという言葉がもう定着していて不自然さがまるでなかったのが可笑しいところではあった。
そして、二人が出ていき、俺と祖父ちゃんだけが客室に残る。
「それで、なんの話を聞きたいのかの。」
「俺さ、祖母ちゃんに会ったよ。」
祖父ちゃんの目がみるみる見開いていった。
「祖母ちゃんだけじゃない。祖父ちゃんもずっと俺の事、いや俺だけじゃない。母さんの事も見守ってくれていたんだね。ありがとう祖父ちゃん。」
「そうか、母さんにあったか。」
祖父ちゃんは、どこか遠くを見るような目で見ていた。
「ワシらの償いも少しは出来たのかの。」
「償いって?」
「ワシらと怜香の事じゃ。聞いておらんのか?」
「いや、詳しいことは何も聞いてないよ。」
そうか。言っとらんかったか。と祖父ちゃんは呟く。
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