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「いや、それならそれでいい。忘れてくれ。」
「え?あ、うん。」
その言葉で、会話が打ち切られる。
そろそろ部屋に戻ってもいいかもしれない。
「じゃあ、祖父ちゃん。部屋に戻ってるよ。」
「ん?そうか。場所は分かるか?」
「ん、分からないかな・・・」
俺は、祖父ちゃんに部屋の道を聞き、客間を後にする。
祖父ちゃんの言っていた通りに進むと、
迷わずに寝室へと移動できた。
「あ、泰史。もう話は済んだの?」
「うん。て言うか母さんは?」
「あ、お母さんなら向かいの部屋だよ?」
「そうなんだ。ん?じゃあ俺と智里は一緒の部屋なのか。」
「うん。何当たり前なこと言ってるの?」
「いや、当たり前の事でもないと思うけど、別に深い意味はないよ。」
大学に入るにあたり、俺は家を出ていた。
市内だし、そんなに遠くないが母さんが一人暮らしくらいは体験しとくべきだと言って追い出されたのだった。そして、それに智里も便乗した。なので今は一緒に暮らしているのである。
「それよりさ、この後は何かあるの?」
「ん?いや特にないけど?」
「じゃあさ、ちょっと散歩しない?」
「いいけど。回りに何もないってさっき見ただろ?」
「森に散策できる道があるってマキさんに聞いたの。ね?いいでしょ?」
まぁ、特に何かすることがある訳じゃないしと、俺は智里のお願いを聞くことにした。
「じゃあ行くか。とりあえず母さんには言って行くか。」
俺は向かいの部屋にいた母さんにちょっと散歩に言ってくると伝える。
「そう。あまり奥に行くと迷っちゃうから気を付けなさいよ。」
そんなに複雑なのか?自分は経験者だとでも言うのだろうか。
俺は、気を付けるよと言って、外で待っている智里と合流した。
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