ひっそりこっそり大作戦(仮)

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 なぜなら自分がこの会社で働いていた頃は、  顔パスで出入りしていたから気にもしなかった。  4ヶ月ぶりに訪問した古巣の会社には、  新人社員と思われる、  全く面識ない女性が受付をしていた。 「こちらでご記帳をお願い致します」  自分と同じ位の年齢だろうか、  彼女は笑顔を作りそう話す。  決して尚人の仕事の邪魔にならないようにと、  決意して来たはずなのに。  私の極秘ミッションは実行することなく完全敗北。  警備員や警察沙汰にするわけにもいかず、  記帳するため仕方なく足を1歩前に進めたその時、  ふいに自分の視界が暗くなった。  気分が悪くなり、  その場にゆっくりしゃがみ込む。 「お客様!?どうなされましたっ?」  女性が慌てた声で駆け寄る。  たぶん貧血。  そういえば朝起きた時から、  本当は少し体調が悪かった。  マンションを出る時も、  本当は少し気分が悪かった。  でも尚人にお弁当を届けたくて、  尚人の喜ぶ顔が見たくて、  だから少しだけ我慢して、 「どうしたの、なにかあった?」 「分かりません、こちらの方が急に座り込んでしまわれて・・・」 「あの、どうかされましたか・・・って、かおりん!?」  誰かのそんな声。 「えっ、ホントだ、かおりんだ。顔色悪いぞ、貧血か?」 「京子ちゃん、至急部長に電話して!」 「あ、部長、ですか?」 「この人は部長の奥さんだから」 「佐久間・・・部長の奥様?」 「早く早くっ」  皆、知ってるんだ。  私達の事・・・。 「かおりんのお腹大きいぞ。妊娠してるのかな?」 「なんでお前は涙目なんだよ、ワケ分からん。それよりかおりん、すっぴんか?めちゃくちゃ好みなんだけど」 「お前のほうこそワケ分かんねーよ」  次第に辺りがざわついていく。  会社の入り口ド真ん中でしゃがみ込み、  迷惑この上ない。  気分が悪くて話せない、動けない。  いつも私のする事は裏目に出る。
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