ひっそりこっそり大作戦(仮)

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ひっそりこっそり大作戦(仮)

 拝啓、  私のお腹の赤ちゃん。  元気で育ってくれてますか?  お母さんは只今、  掃除機片手にお弁当箱を凝視中。 「・・・置いていった」  炊事洗濯を終えて掃除機もかけ終えて、  ふと見た玄関先。  忘れないようにと玄関先に置いたお弁当箱が、  そのままそこにちょこんとあった。 「単純に忘れていったと解釈していいのでしょうか?」  お弁当箱を凝視しながら掃除機片手に呟く。  単純に忘れた→置いていった  実は味に不満があり食べたくない→置いていった  忘れたら妻はどんな行動に出るだろう→置いていった  アタマの中で何気に3択してみて、  どれも可能性があることに気付く。  尚人と結婚して2ヶ月が経った。  現在専業主婦をしている私は、  毎週月曜日と水曜日に尚人にお弁当を作っている。  テレビでお弁当特集を放送していたのを見て、  翌日なんとなく作ってみたら、  カレが喜んでくれたのが始まり。  会社には社員食堂がある。  低価格でメニューが豊富で味も美味しいから、  尚人が気に入って利用しているのを知っている。  だからお弁当を作るのは週に2日だけにしてる。  そういえばいつだったか、  日替わりランチのメニューだった、  はらこ飯と私を同じ位に気に入ってると言われたっけ。  食べ物と私を一緒にするとは失礼な話だと思い出す。 「お弁当、せっかく作ったのに」  忘れたのは今日が初めて。  キッチンのテーブルの上にお弁当箱を置いて、  お昼に自分が食べるからいいやと考える。  今日のお弁当の中身は、  カリッと焼いた骨抜き塩サバ、  ほうれんそうのタラコ和え、  ハムとチーズと大葉の重ね巻き、  だし巻き卵など、  尚人が好きなおかずばかり。  プラス小さなフルーツケースに、  皮をむいて食べやすくカットしたフルーツと、  おやつの大学いも。 「・・・・・・届けに行こうか」  突然そう思いつく。
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