第15章 助っ人ヤンキー

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おじさんが腰の骨を折ったって病院で全治一ヶ月はかかるって言われたと電話して来た時、デートの真っ最中だった。 っていうか、良い感じのキスをしている最中だった。 親がいなくて、テレビではホラー映画がついてて、ふたりっきりでキスして押し倒し、たところで鳴った電話。 すっげぇ期待しちゃったところを、まさにポキリと折られた感じ。腰骨折ったおじさんじゃないけどさ。 「はぁ……」 溜め息も出る。 だって、もう七月だ。夏休み直前だ。 でも、その夏休みがおじさんの腰骨治療期間と丸被りだったら? そしたら、俺とむーちゃんのデートの続きも、キスの続きも夏休み中は無理かもしれないじゃん。 海とか山とか川とか、行けないかもしれないじゃん。 んで、その間に、むーちゃんが夏休み満喫しすぎてハメ外して、俺のこと忘れて、マスクメロンふたつくっつけた女子とカップルとかになっちゃうかもしれない。 そんなことはないなんて誰にもわからないだろ? 言い切れないだろ? あの、巨乳好きむーちゃんが俺とキスする、なんてこと絶対にありえないと思ったのに、それが起きたんだ。 世の中、何がどうなるかなんてわからない。 むーちゃんに振られることだってあるかもしれない。 いや、そっちのほうがありえるだろ。 男同士だし、幼馴染だし、ふたつ下の弟みたいなもんだろうし。 「……あー、なんか、ネガティブ」 きっとこの倉庫がじめじめしてて、薄暗いからだ。そのせいでこんなにネガティブなんだ。あと、むーちゃん、不足もあるかもしれない。 おじさんが骨折した直後は本当にバタバタだったから、おばさんも忙しくて、誰かが店番しないといけないから、俺はあのデートの時以降、むーちゃんとまともに会っていない。 っていっても、四日間くらいのものだけど それでも俺にとっては普通に干からびるレベルでむーちゃん不足に陥る。 パリパリになって粉々になれそうなくらい、むーちゃんっていう潤いが足りていない。 「ういっすううううう!」 おかしな挨拶が店のほうから、裏の倉庫であるここにまで聞こえてきた。 「……え?」 この声、むーちゃんだ。 慌てて店のほうに飛び出すと、オールバックのパツキンが目にも鮮やかなむーちゃんが、ポロシャツにズボンっていう格好で店の入り口で仁王立ちしていた。
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