第15章 助っ人ヤンキー

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店長のムラキおじさんが腰骨を折った。 腰骨って折れるんだと、初めて知った高校一年の夏。 「になんて! なりたくないんですけどっ!」 んぎゃあああああ! って、また叫びそうになって、ぐっと絶叫を喉奥へと押し込めた。 腰骨だって骨ですから、そりゃ、どうにかこうにかしたら折ることだってあるでしょ。 でも、なんで腰骨なんだよ。 もう少し、そこら辺でよく折れる骨とか、歩くことなら出来る骨折とかにしてくれたらいいのに。 おばさんも店に出てはくれるけど、力仕事となると男手が必要なわけで、俺もそれを突っぱねることはできないでしょ。 「ごめんねぇ。輝君、また来てもらっちゃって」 俺の雄叫びが聞こえたのかおばさんがひょこっと店奥の倉庫へ顔を出した。 でも、その手前には台車に乗った、たくさんの荷物。そうだ、今日は飲料系がたんまり入荷するんだっけ。 「部活後で疲れたでしょ」 「平気だよ」 だって、本当に困ってんだもん。 おじさん、マジで痛そうだったし、歩くのすらしんどいし、座ってるのもしんどいし、だからおばさんも看護とかしないといけなくて疲れるだろうから。となったら、バイトするしかないでしょ。 「いいよ。大丈夫。それ重いから、俺やるよ」 飲料だからひとつの重さは見た目の大きさ以上にけっこうある。 それを裏の倉庫の棚へと仕舞うのは女の人じゃ相当大変なはずだ。 「あら、まぁ」 代わりにって台車から箱を持ち上げると、頬を赤くしたおばさんがふぅと溜め息をひとつ零した。 ほら、やっぱおばさんだって腰とか痛いんだし、それ知っててスルーはできないでしょ、誰だってさ。 俺が部活の時はおばさんが頑張ってる。 ここはローカルコンビニだからお弁当は手作り。 でも、そのチキン竜田がむーちゃんの大好物。 だから、おじさんが復帰するまで店は閉店、じゃ困るんだ。 おじさん達の収入的にも、むーちゃんの胃袋的にもさ。 「じゃあ、私、店番してるわ」 「はーい」 本当はバイトのシフトが増えるのイヤだったけど。土日が部活とバイトで埋まってデート、できないじゃん。
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