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夜道でも目立つ金髪がいつもよりもセットが崩れて、夏独特な湿気も含んだ風に揺れていた。
「お疲れ様」
「おう」
俺の言葉にニコッと笑って、帰り間際、おばちゃんがくれた缶ジュースをぐび、ぐび、なんて喉を鳴らして飲んでいる。
「っぷはぁぁ! 仕事後の一杯はうっめぇな!」
「……むーちゃん、それ誤解されるから。未成年飲酒してると思われるよ」
もう閉店してとっぷり暗くなった時間帯、見るからに高校生、でも、見た目からしてヤンキーがしゃがみこんで、缶をぐびぐび煽ってたらビールかチューハイにしか見えないよ。
「俺、酒、嫌いだっつうの」
「飲んだことあんの?」
「あ? 言ってなかったか?」
はい? 聞いてないよ。
どこで?
誰と?
いつ?
そんなこと、俺の知らない間になんでしてんの?
ねぇ、そいつって。
「親戚のおっちゃん。すっげぇ子どもの頃だけど覚えてる。なんか塩辛いつまみを盗み食いして、喉渇いて、酔っ払ったおっちゃんが俺に日本酒が入ったコップを水だと思って手渡したんだ。よく覚えてる。あんなもんよく飲めるなって、げぇってするくらい不味かったから」
「……」
本当に吐きそうな顔真似をしてから、グレープサイダーを一気に飲んだ。
炭酸の強烈な刺激が喉に突き刺さって、また、ビールを煽るおじさんみたいな溜め息を吐いてる。
「もぉ、びっくりするじゃんか」
「あ?」
俺はてっきり、ヤンキーばっかのうちの高校だから、同じクラスの誰かとふたりで居酒屋にでも行ったのかと思ったじゃん。
むーちゃんが酒飲んでるところ想像できないけど、飲んだら絶対に、ほら、なんていうの? 乱れそうでしょ、色々と。
「なんでもないよ」
またジュースを飲みながら、俺のほうをチラッと覗き見てる。
すごい美味そうに飲んでるのを見ながら、胸のところがきゅっと締め付けられる。
喉、器官が急に狭くなったような気がして息苦しい。
呼吸が上手くできない。
それなのに、最高に心地良い。
「なんか……悪かったな、輝」
「なんで?」
むーちゃんは結局、バックスタッフになった。
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