第16章 充電中

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決して曲がらない、真っ直ぐなむーちゃんは謝れば許してやると言う教諭を睨みつけて、そして、頭突きを食らわせた。 結果、一週間だったかな。停学処分となった。 まだ、小学生だった俺はむーちゃんが学校で何があったのか、全然知らなくて ただ、いつもはまだ帰ってきていないはずの時間にむーちゃんがいてくれることが嬉しくてはしゃいでた。 ふたつ、たったふたつ歳が離れてるだけで、俺はむーちゃんがどんなことにあっていたのかを知らなかったんだ。 「すっごい助かった、むーちゃん、ありがと」 「……俺はなんも」 「したした、めっちゃした。裏の倉庫、めっちゃ綺麗になってた。俺、あんなに整理整頓された倉庫始めてみた。あと、ジャガイモもニンジンもめっちゃ切ってあった」 学校じゃ掃除なんてしないくせに。 部屋だって、隅っこに漫画本山積みにしてるくせに。 裏の倉庫、本当に綺麗にしてくれた。 いつもは俺が自炊手伝わないとぶーたれるのに、ボールいっぱいジャガイモの皮むき、大変だったでしょ? 「たまねぎ、しみなかった?」 「……」 いつも、昔からずっと今でもむーちゃんは俺のスーパーヒーローだよ。 「むーちゃん?」 「しっ! しみるかよ! んなのっ!」 本当に、ものすごく大好きだ。 困るくらい、むーちゃんのことが好きだよ。 「なんなんだよっ! てめぇ」 「え? 何? 痛いってば」 思いっきり肩をパンチされて驚いた。 なんで、この流れでパンチ繰り出してくんの? しかも、本気のやつじゃん。 超痛いんですけど。 「ムカつく!」 「えぇぇ?」 ムカつかれるとか。 「レジ、打ってんとこ、カッコよかった」 「……え? 俺?」 コクン、って頷いて、いっぱい頑張ったせいでセットが緩んでる金髪がふわりと揺れた。 「は、働いてる男って感じがした」 「……」 「昔はチビだったくせに」 「……」 「ドキドキしたじゃんか」 緊張してお客さんを睨みつけちゃってたけどさ、その緊張の中に俺を見て感じたドキドキも入ってたりする? 睨み付けてないと今みたいな、抱き締めたくて仕方なくなるような可愛い顔になっちゃうから、なんて理由も入ってた? ねぇ、俺、カッコよかった?
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