第16章 充電中

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「て、輝?」 抱き締めると、ドキドキしてるのが伝わってくる。 きゅっとちぢこまった肩と、慌ててるって聞けばわかる声で。 「むーちゃん」 かりあげが気持ちイイ。 金髪のところはパリパリに普段固まってるけど、今は少し柔らかくなっていて、指で頭の形をたしかめるように撫でてみる。 「んっ」 その指先にむーちゃんが小さく声を上げた。 「俺、全然だけど、がんばっから」 「……むーちゃん」 「少しくらいは頼れよな」 違うよ。 貴方が俺に頼ってよ。 ふたつ年下で頼りないかもしれないけど、でも、牛乳飲んで、なんでも食べて体でかくしたから、少しくらいは寄りかかって。 俺も貴方の役に立ちたいんだ。 「輝……んっ」 抱き締めたままキスをすると、むーちゃんから唇を啄ばんでくれた。 柔らかいけど、いっぱい頑張ったせいで少しだけカサついちゃった唇を舌で濡らしてあげると、月明かりに黒い睫毛が揺れてるのが見えた。 「甘い……葡萄の味がする」 俺の中が潤ってく感じ。 干からびそうだったのに、この声を聞いて触れて、抱き締めて、一緒にバイトして、今、すっごい気持ちイイ。 「俺は……」 俺がキスで湿らせたむーちゃんの唇を、今度は自分の舌で濡らして、少しだけ何かを探り、俺の背中に回してくれた手が、クン、とTシャツを引っ張って何かを欲しがる。 「俺は、これ、輝の味がした」 ずっと見てみてみたかった。 暗い夜道、どんな顔してるんだろうって、赤くなってたりして、なんて願望を抱いて想像して、でも、夜じゃ頬の色まではわからなかった。 キスするくらいの近さにいかなきゃわからなかったのに、今、むーちゃんの頬が赤いのがわかる。 ほら、真っ赤になってる。 「……」 キスを欲しがるむーちゃんに引き寄せられて、また、口付けると、俺の味を確かめるように、むーちゃんの舌が唇をくすぐってなぞっていた。
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