第17章 特大おにぎり

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むーちゃんと一緒にバイトとか、ちょっとヤバイ。楽しすぎる。 「輝君、お疲れ様」 マネージャーがスッと俺へタオルを差し出してくれた。 たぶん、自前の。 タオルは各自が持っていて、俺のは青と黒のしましま。 でも、今、目の前にあるタオルはたぶん、白。 もう暗くなってるからよくわからないけど。 つか、青と黒で俺のタオルこそ風景に同化しちゃって見つからないけど。 「タオル、探してるんでしょ?」 「え、いいよ。汚れるから」 「ううん。気にしないで」 気にはしていない。 っていうか、マネージャーが俺のことを好きだとしたら、すごくちょっとアレなので距離を取りたいんだ。 「マジで、大丈夫」 「あ、ねぇ、このあと、どっかで軽く食べて行かない?」 「……」 「駅前、とかで」 自分のTシャツの袖で汗を適当に拭って、ひとつ溜め息を吐いた。 「なんか、今日、輝君、体調悪そうだったし」 体調はすこぶる良いけど、少し浮ついてたかな。 でも、ボールはしっかり打てたでしょ。むーちゃんは練習をあの校舎の三階から見てないけど、それでもしっかりバッティング練習に集中してた。 「ごめん。俺、急いでるんだ」 「あ、どこか」 「バイト」 それだけ告げて、マネージャーを置いてけぼりにしたまま、その場を少し早足で離れた。 途中、青と黒のタオルが青いベンチに完全に同化しているのを発見して、それで汗でびしょ濡れになった髪を雑に拭いて。 「お疲れしたーっ!」 練習でみっちりしごかれて、いつもならヘトヘトなはずなのに、帰りの足取りはものすごく軽い。 このままグランドを二十周くらいなら余裕でできそうなくらいに。 だって、むーちゃんと一緒にバイト、なんて、最高じゃん。 鼻歌が飛び出そうになるのを必死に堪えつつ、校舎へ行き、汗臭いTシャツだけ建物の影に隠れつつ着替えて、下のジャージはそのまま替えずに走り出す。 夜の八時前、おじさん復活まではバイトと部活の掛け持ちだから、かなりしんどい。 「あらぁ、輝君、そんなに急がなくても」 「いえ、全然、い、そいで、ない、から」 「息切れてるわよ、フフフ」 「?」 なぜか、ニコニコ笑っているおばさんの頭上にある時計をチラッと見上げた。 記録更新だ。
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