第17章 特大おにぎり

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学校からコンビニムラキまでの全速力タイムがまた二分縮んだ。 「俺、エプロン取り行ってきます」 「はぁい、ゆっくりでかまわないわよ」 「? あ、はい」 バックルームの横に一応ロッカーがある。 といっても、バイトは俺ひとりだから、ロッカーっていうか棚なんだけど。 今はむーちゃんとふたりだから、その棚にむーちゃんの荷物がむぎゅっと雑に詰め込まれていた。 俺は学校帰り、しかも部活の後で荷物がすごいから床に直置き。 で、そこの隣にあるトイレでズボンを。 「おっ! 輝! 野球、お疲れー!」 むーちゃんがエプロン姿で菜箸片手に登場した。 「アハハ、ケツんとこ、泥だらけだぞ」 そうジャージの下を替えるにも一年の中でダントツの速さで片付けを終わらせたから、まだ更衣室は二年と三年が使ってる。 一年でペーペーな俺がそこに混ざるのは無理だから、とりあえず上だけ着替えてここに来たんだ。 「ごめん、今、俺も入るから」 「いいって、いいって、少し休めよ、輝、あっ! ちょっと待ってろよ!」 「むーちゃん?」 菜箸ブンブン振り回すと危ないよ。 慌しくて可愛いむーちゃんは接客にはちょっと向かない人相になっちゃうため、基本、裏で惣菜の仕込みの手伝い。 今の時間ならきっと明日の仕込みのほうをしてたのかもしれない。 「あっつ……」 全速力だったから、汗かいたな。 クン、と自分の身体が臭くないか確認して、Tシャツの替えがもう一枚必要かも、なんて考えながら、むーちゃんのいない間にズボンを替えた。 「汗、止まんない」 外が暑すぎて、記録を二分も縮めるくらい全速力で走ったから、汗がすごい。 バックの中からタオルを出すのも億劫で、Tシャツの裾で顎のところを滴り落ちそうになる汗を拭く。 「輝」 部活がある日は部活が終わってから。 むーちゃんは帰宅部だから、放課後すぐにムラキへ来て、おばさんの手伝いをしてくれている。 俺がいない間、店番に出ているおばさんの代わりに裏方の仕事を全部こなしてる。 だから、野球の練習は見てもらえないけど、全然いい。ここでふたりでバイトとか最高だ。
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