第17章 特大おにぎり

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「むーちゃ…………何、それ」 「握り飯!」 「……でかくない?」 「腹、減ってんだろ? 輝に握り飯作りてぇって言ったら、おばちゃんが良いっていうからよ」 あぁ、だからか。 さっきおばさんがやたらと笑顔だったのは、きっとこのおにぎりのせいだ。 「食え!」 むーちゃんが無邪気に笑いながら、特大サイズのおにぎりをズイッと俺のほうへと差し出した。 その笑顔があまりに可愛くて、この場で抱き締めてキスしたくなる。 この笑顔見たら、そりゃ誰だってつられて笑顔になるよ。 むーちゃんの笑った顔は特別なんだから。 「平気か? 輝、疲れたろ」 「別に、全然」 夜道を歩く、たったそれだけでもこんなに幸せなのに、疲れてる場合じゃないでしょ。 すっごく嬉しい。 だってさ、バイト先じゃ、ちょっと、俺のほうが先輩なんだ。立場逆転っていうか、二年の差がなくなるっていうか、それが嬉しい。 「あのおにぎりのおかげです」 「おうっ!」 この笑顔を独占したい、じゃなくて、独占できていることが最高に幸せだ。 「むーちゃんのほうが疲れたでしょ?」 「……」 「仕込み、すっごい頑張ってるっておばさん褒めてたよ」 「……なんか」 最高に幸せ、だったのにな。 でも、最近、欲張りになってきた。 両想いになる、こんなこと夢でも見られないくらいに奇跡的でレアで、ありえないことだったのに。 この関係、距離感をずっと望んでいたのに いざ、この距離に近づくと、もっと近くにいきたくて、触れたくて仕方がない。 「なんか、輝、前とちげぇ……」 自分が欲張りすぎて呆れるよ。あれもこれも、って、ありえないじゃん。
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