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夏。
蝉の鳴き声が体感温度を上げている気がする。
風鈴の音が、涼しさを感じさせてくれる気がする。
「それもまた風情よ」
一人、学校から出ていく俺は呟いた。
ポケットに無造作に突っ込まれたモノの感触を味わいながら颯爽と校門から出ていく。
「あ、あの…」
そんなイケメン風を吹かせている俺に、後ろから声を掛けてきた少女。
ふむ。
顔はおっとりタイプで平均的。
身長は180ギリ届かない俺よりも小さめ、胸は形良しのDカップ。
程好い肉付きが、男心をくすぐる。
せっかく声を掛けてくれたんだ。
急いでいるのだが、無視するのも忍びない。
だが、無駄に言葉を交わす必要も無いだろう。
「なんだ?」
顔だけを少女に向け答える。
角度も完璧。
鏡の前で何度も試した黄金角度。
「あ、あの!」
さっきよりも大きな声で声を発する少女。
いい声だ。
イラつかない、むしろ心地よい高音の声。
その大きさから、頑張って声を掛けたと言う意思すら伝わってくる。
なるほど…薄々感じてはいた。
まさか、とは思っていた。
俺は鈍感ではない、むしろ鋭い方だ。
ならばと思う。次の彼女の言葉を待つべきか待たざるべきか…
何故なら、俺の返事は決まっているのだ。
「ずっと見てました…」
やはりな。
確信した俺は、一度深呼吸をして息を整える。
次の言葉を聞くまでもないが、聞いても変わらない。
ならば!一度、体験するのも悪くない!
俺も相手は選ぶが、この子ならいいだろう。
もう、彼女を見ず前を向く。
さぁ!こい!
「桜ちゃんのパンツ返してください!」
その言葉を聞いた瞬間、颯爽と俺は駆け出した。
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