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なかなか離れてくれないことに困り果てていると、渡部さんが目を潤ませながら顔を上げた。
お、この顔ちょっとかわいいかも。
「私の事、嫌い?やっぱりまだ美玖が好きなの?」
「いや…そういうんじゃないけど…。ただ、想定外の事言われてちょっと戸惑ってる。地味でつまらないってフラれたとこだし。」
「全然地味でもないし、つまらなくもない。私はそのままの鴫野くんが好き。美玖みたいに鴫野くんを裏切ったりしないよ。」
突然、渡部さんが僕の首の後ろに手を回し、伸び上がって唇にキスをした。
あまり慣れてはいなさそうな、お世辞にも上手とは言えないキスに、ほんの少し欲情を煽られる。
えーっ…と…。
驚きはしたけど、僕の事好きだって言ってくれてるし。
僕だって終わった恋をいつまでも引きずってないで、前に進む必要はあるんだし。
この感じだと遊んでいる様子でもない。
まぁ…悪くない…かな?
僕はされるがままに渡部さんの下手くそなキスを受け入れる。
渡部さんの手が少し震えている事に気付いた。
なんだ、かわいいじゃん。
ちょっとビックリさせちゃおうかな。
イヤだって言われたらそれまでだ。
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