どうにもならない片想い

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仕事の後、矢野さんと例の小料理屋に足を運んだ。 初めてここに来た時は、杏さんも一緒だったっけ。 あの日から僕のありふれた一人暮らしの平凡な毎日は変わり始めた。 料理と日本酒を適当に注文した。 日本酒で乾杯して、矢野さんはネクタイをゆるめた。 「よく考えたら鴫野と二人だけでここに来るのは初めてだな。」 「そうですね。」 二度目に来た時は、なぜか渡部さんが先にここに来ていた。 「そういえば…なんでこの間は渡部さんがいたんですか?」 「ああ…あれな。渡部から頼まれたんだ、鴫野に会わせろって。自分からは誘いにくいから、俺に鴫野を誘ってくれってさ。」 やっぱりな。 そんな事だろうとは思ってたけど。 「あいつも会社辞めちゃったけど…渡部となんかあったか?」 「…なんて言うか…付き合ってくれって言われたけど、断ったんです。でもなかなかわかってくれなくて。」 「なんで断った?」 「同僚としては悪い子ではなかったけど、どうしても恋愛の対象としては好きになれなかったんです。」
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