どうにもならない片想い

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渡部さんとの間にあった事は詳しくは話さなかったけど、一緒にいるうちに渡部さんがどんどん多くを求めるようになったのが苦痛だったと話した。 「ふーん…。よく一緒にいたみたいだし、渡部からもいい感じだって聞いてたんだけどな。」 好きにはなれなかったし、付き合ってもいなかった。 それなのにあんな事をした。 思い出すとまた後悔と罪悪感で胸がしめつけられた。 「渡部は入社してすぐの頃から鴫野の事が好きだったからな。彼女がいる時もあきらめられないってずっと言ってたし、一緒にいるうちに欲が出たんだろ。」 「僕なんかのどこが良かったんでしょう…。」 「さあな。それは渡部にしかわからんよ。おまえの気持ちがおまえにしかわからないのと同じだろ?」 「…ですね。」 料理を食べながら日本酒を飲んだ。 チビチビと枝豆を食べながら日本酒を飲んでいた杏さんの姿を思い出す。 最初は食べるのが苦手だった杏さんが、僕の作った料理をいつも残さず食べてくれた。 人と食事をするのは苦手だと言っていたのに、僕となら平気だと言ってくれた事や、一緒に食べると更に美味しいと言ってくれた事。 食事をするだけで、僕の心は一緒に過ごした杏さんとの思い出で溢れかえった。
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