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それならば、と入ってみると、まあまあ可愛いバイトの女の子がいるレジの横に『三分間で、温かいお食事がお持ち帰りになれます。』と書いた紙が貼ってあって、ピラフやカレーライスなんかのサンプルが並んでいるのが眼にとまった。
今日はこれにしてみようか、昨日より体調もいいし、と思ったときには、その女の子が
「ピラフですね。」
とにっこり笑いかけていて、僕のほうは、ただ軽くうなずくだけで注文は完了だった。
ピラフが出来上がるのを待っている間にレジの前を見ると、ヨーグルトが一つ置いてあり、気がついて見ると手にとっていた。そのひんやりとした感触は、熱っぽいのどに気持ちいいであろうことに疑いの余地はなかった。
むしろそのときに疑ってみるべきであったのは、本来奥の冷蔵庫に入っているはずのヨーグルトが、なぜレジの前にあって、しかも出してきたばかりのように冷えていたのか、ということだったのだが、
「お待ちどうさまでした。」
の声に、それ以上考えることを止めてしまった。
温かいピラフと冷たいヨーグルトを持ってそのコンビニを出ようとしたとき、背後に視線を感じた。そう、あの、店長と思しき男が、視界の隅にちらっと見えた気がした。
僕は、あえて振り向かず、自動ドアが開くのももどかしく外へ出たが、その時その男の、
「ありがとうございました。お役に立てましたかな。」
と言う声が聞こえたのが空耳であったのかどうか、はっきり思い出す事はできない。
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