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そんなわけで、僕は、さっそくその店に入ってみることにした。
初めての店に入ると言うのは、いつもそれなりに心地好い緊張があるものだ。これが床屋や歯医者では、心地好いなどとのんきに構えてはいられないが、コンビニならば何の問題もない。
自動ドアが開く。
右側に並ぶ雑誌から一番奥の冷蔵庫の中の飲物まで、よくあるコンビニのレイアウトが気持ちを落ち着かせ、初めての店と言う違和感がまったくない。
また話はズレるけど、スーパーはなぜ野菜のコーナーから始まって、その後に肉や魚のコーナーが続くのだろうと思ったことがある。まずメインの料理を決めて、それがトンカツならキャベツだし、鶏の唐揚げならレタスなのであって、決してその逆ではないはずだ。先にネギと春菊を選んでしまった後で、すき焼き用のいい肉がなかったら一体どうするのだろう。それに、始めに大根なり白菜なりを籠にいれてしまったおばあさんの悲惨さといったら、どう同情したらいいのか分からない。
その点、コンビニはそう言った疑問が生じる余地はない。
というよりも、コンビニの商品のレイアウトは、物凄い研究やら試行錯誤やらの結果確立された一種の芸術品だとか誰かが言っていたような気もする。
それはともかく、その日僕は、まずカップ麺のコーナーに行き、何にしようかと迷い始めた。本当ならラーメン系が好みなのだが、今日のところは風邪かもしれないから、どちらかと言えばうどん系の方が無難かな、とか、生麺系もいいが、開けなきゃいけない袋がいっぱいあると作るのが面倒だな、切り口はちゃんとついているのかななどと思いながら、並んでいる商品を次々に手にとってはまた棚に戻したりしていた。
すると、突然、
「お客さん、そりゃあいけませんよ。」
という声が聞こえた。
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