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あれから数日たった。
怖くて行けなかったあの場所にもそろそろ足を踏み入れないと…
タンタンッ
後悔が、私を襲う。
タンタンタンタンッタン。
到着したその瞬間だ。
罪悪感が、心臓を呑んだ。
───何故君がいるの?
そこには、私が昔恋した相手。
《設楽 雅》
《したら みやび》
が、いた。
私を見て、ふわりと笑った彼は、
「遅いよ幸…」
そう言ってくれた。
『な、んで?』
「だって幸が言ったんだよ?《誰か助けて》ってさ」
それ、でも。
君だとは思わなかった。
そして納得、あの声も優しいセリフも
見覚えのあった電話番号も
全部全部全部全部、君だったのか。
『でも、私…』
「うん、そうだね。気まづいね、僕が逃げたから。君の覚悟を無視しちゃったから…」
そうだ、私は彼に思いを打ち明けた。
彼はそれを流して聞いてないフリをした。
『だ、からっ…』
後悔が頬を伝った。生暖かい後悔は冷えて地面に落ちていく…
「うん、聞いて。ねぇ幸」
幸、幸、彼が名前を呼んでくる。
ちょっとだけ目を合わせようと上を向いた。
「僕ね、迷ってた。君はいつも人気者で頭も良くて僕と正反対の人間だ。そんな君が僕に声をかけてくれたこと、告白してくれたこと、遊んだこと覚えてる」
一回言葉を切った彼は、
「誰かに頼らず僕に頼ってよ」
…気づくのに時間がかかった。
これは彼の不器用な愛の告白であること。
私は知らなかった、彼が私を思って悩んでくれた事。
嬉しかったとっても…
『うん、うん。』
頬をカリカリ掻く彼は「分かりにくかった?」
困ったようにいうので私が
『雅に、沢山迷惑かけちゃうよ?』
って言ってやった。彼は、
「うん、いくらでも」
あぁちょっと私には心臓に悪いかな?
そう思いながら彼の胸でないた。
END
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