第1章

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物心ついた頃。 私は、自分の身体に違和感を感じていた。 何故、自分は"男"の身体なのだろう……と。 自分は"女"であるはずなのに、何故身体の性別が異なっているのか不思議でならなかった。 まるで心と身体の性別が一致していないかの様だ。 そんな違和感を抱えたまま、私は成長。 "性同一性障害"という言葉を知ったのは、中学生の頃だった。 きっと私は、この障害なのだと知った。 ショックだった。 でも私は受け入れた。 身体が"男"であるならば、仕方ない。 自分の心を押し殺し、それ相応に生きていこうと決めた。 そして思春期真っ只中の時期。 私には好きな人ができた。 心と身体の性別が違えど、恋はできるみたいだ。 不思議だったのは、私が恋をしたその相手は"女性"だということだった。 身体が"男"であっても、心が"女"の私。 当然、好きになる相手も"男性"だと思っていた。 しかしどういう訳か、私は普通に"女性"が好きだった。 この時、私は気付いた。 私は、"性同一性障害"とは別に"同性愛者"でもあるのだと。 "男"の身体で "女"の心で "女"好きとは……。 私って、なんなんだ。 まぁ傍から見れば、私の恋愛は至極普通に映るのだろうが。 しかし、私の内面的に考えると"女"が"女"を好いているという生物学的に異常事態が起きている事になるわけで……。 いや、身体が"男"だから生物学的には普通なのか? …………。 これ、もう分からないな。 何はともあれ、私は自分の欲求に従って生きることにした。 月日が流れ、結婚もした。 勿論、"女性"とだ。 子供も授かった。 私は父親になった。 最高に幸せだ。 この幸せを逃すまいと、私は自分の心が"女"であることをひた隠した。 あえて言うべきことではない。 私は、自分が"女"であるという秘密を墓場まで持っていくことに決めた。 妻が不意に聞いてくる。 「ねぇ、アナタ 今度の休み家族でどこかに出掛けない?」 私は応える。 「そうだな じゃあ、ケーキバイキングでも行くか! その後は服でも買いに行こう!」 「いいの? いつも女の子が喜びそうな場所を選んでくれてるけど たまには、男の人が楽しめる場所でもいいのよ?」 「いや、構わないよ 俺は俺でちゃんと楽しんでいるからね!」
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