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「おれ、死にたくない」
達也の口から出たのは、驚くべきことだった。
「達也?」
オリオンのように天にあがって、いつまでも千早を見続ける。
そう言ったではないか、3か月前は。
治療と言う治療を拒んで、ここまで悪化したんじゃないのか?
「死にたくないよ…」
ずっと僕の前にいて、ずっと輝くヒーローだった達也が、泣いていた。
「死にたくないけど、もし俺が死んだら、」
ぐしゃぐしゃになった顔で彼は言う。
「千早に好きだって伝えてくれないかな…」
僕は、達也のことを全然わかっていなかった。
強がりで本心を隠すこと。
時には彼が望まないことでもしなきゃいけないこと。
僕は達也の手を振り切って担当医のもとに向かった。
「治療を、再開してください」
年老いたベテラン医師は言った。
「治療ならしていますよ。それを上回る勢いで達也君が死にたがっていたからねえ。やっと、生きる気になってくれましたか」
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