エピローグ:夢は終わらない

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 数々のビデオテープが再生される。画面右上のワイプに抜かれていながらも、泣き崩れリアクションができなかったのは、達也の方だった。  マイクを向けられると、達也は苦しげに声を絞り出した。 「僕は……僕の夢をこいつに背負わせてしまった気がしてずっと……ずっと辛かった」  達也の背を擦る俊也も涙で顔が濡れ言葉にならない。 「そんなシュンの、やっと軌道に乗ってきた夢を、今度こそ僕のせいで」 「やめろよタツ」  この二人が互いをシュン、タツと呼んでいることはファンの間では既知のことだった。 「僕のせい……とは?」  突然の引退表明に色々な憶測が飛び交うなか、オーナー企業にも関わらず俊也の本心を掴めていないことに読売側には焦りがあった。司会進行のアナウンサーが、仕事だからと自分をなんども慰めては俊也の言葉を待つ。 「実は……達也の肺がんが再発したんです」  十五年の間に、再発が無い訳ではなかった。そのことをスポーツ担当のこのアナウンサーも分かっているからこそ、次の言葉を身体が拒絶しようとする。  だがアナウンサー、牟田千早は、「だからこそ」、この役目を果たさなければと思った。  二人の世界で一番のファンを自称する彼女は、聞いた。 「大きさは……どれくらいなんですか」  俊也は、答えられなかった。千早は達也のことが好きだったはずなのである。  沈黙はどんな言葉よりも雄弁に、達也の運命を物語っているようだった。
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