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令雲は、斎の屋敷の塀伝いに、下門(下人専用の通行門)を探していた。
都では、貴族、高官らが屋敷を普請すると言えば挙げられる棟梁は僅か数人で、彼等の中には池を南ではなく建物の中に配置せよと施主から難題を押しつけられても要望に応じるが、ここばかりは口を出してくるなという頑固な棟梁がいる。
その棟梁が手掛ける建築には、南殿とも呼ばれる正殿のほか、東殿、西殿、北殿がある。
渡り廊下がある。
東屋がある。
南には門がない場合もあるが、東西北には必ず門がある。
しかして、下門が置かれている。
蘇進の屋敷を普請したのが、その棟梁なのだ。
様式が似ていると思われる斎の屋敷も、おそらく頑固な棟梁が普請した。必ず、下門がしつらえられている筈である。
令雲は空を見上げた。
藍色と茜色の境界が滲んでおり、辺りは薄暗い。
かほどに陽が落ちれば、己の顔は判らぬであろうという安心を持して、ようやく見つけた下門に歩み寄った。
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