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ハナエは、都季の目だけを見つめていた。
真実は都季の目より語られると信じているかのように、じっと都季の心が現れるのを待っていた。
「ハナエさん!! 綾は……綾に大事はありませんか!」
都季は階を駆けおりた。
ただちに綾を案じず黙って見ていたというだけで、都季を疑うのは間違っている。
"都季は驚愕のあまり動けなかった"のだ。
「ああ、いかにすれば……。足を滑らせたところを見ていたのに……。この状況はまずいですよね。私が綾を突き落としたんだと疑われてしまうわ」
「え……? あ……ああ、そうさね」
ハナエは、ようやく安心したらしかった。
役不足の部屋付きが野次馬になって集まっていたが、都季の言葉を聞いている者などいなかった。
「後のことはあたしがやるから、都季は部屋にお戻り」
「しかし……」
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