第37話

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「セツ。綾の調子はどうだい?」 ハナエが襖をあけると、綾の世話をしていたらしい女長・セツが、蒼白した顔で振り返った。 「ハ、ハナエ様……。先生……。いかにすれば……」 一番娼妓を退いた綾の今の部屋は、広さ六畳である。 部屋の隅に置かれた箪笥と行灯以外に余計な調度が置かれておらぬのが、綾の部屋らしい。 意識があると聞かされていた綾は、部屋の中央に敷いた褥で仰向けに寝ており、セツはその傍らに丸めて置いてあった敷布と着物を抱えて立ち上がった。 「なんだい。なにかあったのかい」 ハナエが狼狽えた。 「これを……」 見てください、と言わんばかりに、セツは丸めていた敷布と着物をひらいた。 そこにあったのは、血色の染みである。 「し、出血したのかい!?」 ハナエが驚愕して声を上げると、セツは愁眉を寄せ頷いた。
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