第37話

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「とにかく……。診察いたしますので、お二方は出てください」 白英宗が襖に手をやると、セツが先に廊下に出て、ハナエはその後に続いた。 ハナエは「お願いします」と忘れずに告げて部屋を出たが、それが胎児を救ってくれという意であるならば、裏切らねばならない。 襖を閉めると、綾がおぼろに眼瞼を上げた。 「先生……」 「起きていたのですか。気分はどうですか?」 ハナエから、頭は打っていなさそうだと聞いている。おそらく全身の打撲程度で、重傷ではない。 綾は、天井を見つめて答えた。 「気分がよいとは言えません。私は突き落とされたのです」 「突き落とされた? 誰に、ですか」 白英宗は褥の傍らに膝を降ろし、綾の細い腕をとって脈診した。 一息四脈(いっそくしみゃく)である。
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