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人はいかなる状況下でも、健康であれば一呼吸に対し四つ脈を打つのだ。
心拍が早くなれば呼吸数も増える故、これは全力で駆けた後であろうと一息四脈を保っている。
故に、高熱など苦しげな不調時でも一息四脈を維持していれば、本人が蘇生する力を持っていると見ることが出来るのだ。
やはり大事はないと思いつつ腕を降ろすと、綾が唇を重そうに開いた。
「都季です」
一瞬、直前に何の話をしていたか思い出せなかった。
「え?」
「都季が、私を突き落としたのです」
綾は、憎悪のひそんだ目を潤わせた。
かたく結ばれた唇が、わなないている。
それはおそらく事実であろうと思ったが、直ぐに頷くのは気が引けた。
「まさか」
「私が偽りを述べているとお思いですか。都季は紹長官様をお慕いしているのです。故に、私を妬んだのだわ。胎児を流そうとしたのよ。もし、まことに身籠っていたらと思うと……」
「綾」
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