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「いかが致しましょう。お休みになったとお伝えしましょうか?」
紫音は、斎が乗り気でないのを襖越しにも感じとったらしい。
「ああ。そうしてくれ」
「畏まりました」
衣擦れの音が遠ざかると、斎は吐息をついた。
雪美館の役人服毒死。
重ねて、下女の水死。
今は、その裏で何があったか気になるのだ。
底意地が汚い姫の性欲を満たしてやる気にはなれぬ。
折しも、遠くで女の甲高い声が聞こえた。
「姫様。お待ちください!」
「お休みでないのは判っているのよ! ええい、離せ!!」
忙しい足音が近付いてくる。
それが立ち止まるであろう襖に目を向けると、やはり憎しみのこもった手がそれを荒々しく開いた。
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