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下門は格子の引き戸で、採光や通風を得られるのが特徴である。むろん、中の様子がうかがえる。
格子の隙間から下舎をうかがっていると、折よく一人の女人がそこから出てきた。
年の頃は、二十七、八。
賤民ではなく庶民が着ているような薄紅染めの着物である。
一瞬、下女ではないのかと思ったが、歩き方や、さりげない仕草から、あたかも自分の屋敷にいるような緊張感の無さが見えることより、奉公歴の長い下女なのだと察しがついた。
「もし」
声をかけると、下女が令雲に気付いた。
下人には顔が割れておらぬと思っていたが、その下女は驚愕して令雲の名を口にした。
「令雲様。何故ここに……」
一瞬、しくじったと思ったが、下女は失言した口を急ぎ押さえると、辺りに人がいないのを確かめて格子戸に駆け寄った。
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