第37話

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「しかし、羨ましいと思っていたのは、どうやら思い違いであったようです」 「何?」 「所詮、左議様も領議様と同じ。それに令雲様も、領議様を潰すことしか考えておられません」 はねつけるような声であった。 やわらかな手は離れ、令雲は今いちど格子を握りしめていた。 「令雲様はシノを利用しています」 「何を言うかと思えば……。断じてそんなつもりはない」 「令雲様にそのつもりが無くとも、令雲様がシノと会うことで、シノは常に刑部と治部の間に置かれるのです。災いに巻き込まれるとも言えましょう。事実、過日の密会が旦那様に知られ、一人の下男が命を落としました。それにシノも――」 そこまで述べたところで紫音は口を閉じた。 「いかがした。彼女に何があった。折檻されたのか」
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