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「否。折檻と言うより……」
紫音は言いにくそうに唇を舐める。
「まさか貞操蹂躪をば……」
思わず呟くと、紫音は曖昧に首を傾げた。
「おそらく、貞操は守られたままだと思うのですが……」
「近いことがあったと?」
紫音はようやく明確な目で頷いた。
令雲様のせいです、と非難されているように感じた。
――私が浅はかであったのか……?
自問しても、答えは出ない。
領議を駆逐するために、シノの協力は必要なのだ。仕方ない。
そう言い聞かせてみるが、あの日シノに会わねば、下男は命を落とさず、シノも無事だったのではないかと思えて仕方ない。
紫音の言うとおり、令雲は気付かずシノを利用していたのだ。不都合なことは口止めし、欲しい情報は仕入れようとしていた。シノに振りかかるやもしれぬ危険を配慮しなかった。
「すまぬ……」
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