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己の浅はかさを呪うとともに、心底から申し訳ないと思ったが、それをいかにして伝えればよいのか判らなかった。口にした言葉がひどく安っぽく思え、かような詫びの言葉で許される筈がないと思った。
しかし、許してほしいと思った訳ではないのだ。
領議に利用されていた令雲にとって、その行為は嫌悪するに値し、もっとも恥ずべき行為だと思っていた。
まさか己が誰かを利用していたなど、揺るがぬと思っていた信条に傷がついたのだ。許されてはいけない。
一夜明け、蘇進の屋敷を訪れると、蘇進は登朝前の姿で謁見の間にあらわれた。
苑向こうの池を望むと、朝の光を受けた水面がきらきらと銀色の粒を耀かせている。
そのまばゆさは、蘇進を祝福する光とも見えた。
養子という名目で蘇雲の後ろ楯を得た蘇進は、先日、勅令を受けて治部副長官へと昇進したのだ。
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