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陽祐 との出会いは四年前に遡る――。
柚月は東京の美大を出て、北欧家具を主に展開する家具メーカー『シュテルン』に就職し、インテリアデザイナーになるべく地道に働いていた。
入社三年目を迎える頃、あるインテリアデザインの一般コンペで『夜空』をテーマとした柚月の作品が受賞した。
その時、偶然仕事で東京に来ていた陽祐の目に止まり、声をかけられたのが始まりだった。
別に彼はフォレストビルの社長でもないし御曹司でもない。ただ柚月を戦力として迎えたいと言って聞かなかった。
「賞をもらえたからって才能があるとは思ってません。これから勉強しなくちゃいけないことの方が多いんです。その為に上京してシュテルンに就職したんですから」
授賞式の後、陽祐からの誘いを断ったのだが、柚月は故郷のことを思い出して揺れていた。
フォレストビルの名前は地元企業なので知っている。だが、ここでUターンをしてしまったら何のための上京したのか分からなくなる。
「確かにデザイナーには才能が必要かもしれない。けど、経験ならメーカーにいるよりずっと近い現場の方がいい」
「地元にだって、たくさんいるでしょう。それは都会ほどではないかもしれないけれど」
「そうだな。星の数ほどいるさ。けど、俺は、君に……特別なものを感じてるんだ」
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