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それまでの揺れとは異質の揺れが、突然バスと乗客を襲いました。 直後に、とても大きくて暴力的な音が響き渡り、世界を埋め尽くします。 一瞬、雷が墜ちたのかと思いました。 巨大な岩。 たくさんの石。 土砂。 折れた木。 バスの後方、十数メートルのあたりに、それらの落下してきた暴力たちが埋め尽くしていました。 車内を埋めたのは 悲鳴。 鳴き声。 そして異臭。 もしもさっき、私が降りるためにバスを停めていたら、今のこの車内の様相もまったく違ったものになっていたでしょう。 私は私の下着を埋めるぬくもりと質量に絶望を感じながらも、そのことを考えずにはいられませんでした。 けっきょく私の人生最大の汚点は、落石事故がカモフラージュになり、うやむやのままに収まりましたが。
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