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取り立てて、不幸な人生だとは思っていません。 もちろん、幸福な道を歩んできた、とも思いません。 興奮し高揚することもありませんし、重く圧し掛かってくるようなストレスもありません。 趣味も、欲しい物も、コレと言って興味のあることもありません。 美味しい食べ物には興味がありませんが、飢えるようなこともありません。 友人を欲しいとも恋人を欲しいとも思えませんが、私を苛めるようなヒトもおりません。 自分を変えたい、などとは思いません。 より良い人生。 より良い暮らし。 興味がない以前にその意味するところが理解できません。 つまらない人間だとの自覚はあります。 ですが、私がこうなのは何も私のせいばかりではありません。 全てはあの十年前の事故以来のことなのです。 そう、十歳の私一人が生き残ってしまったあのバス事故のことです。
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